このページの要点
- 宛先と誓約者は、正式な名称と資格で書く。法人は署名者の肩書、未成年は法定代理人の同意の欄を設ける。
- 前文には契約と対象だけを書き、反省や経緯といった事情は書き込まない。
- 条項は、定義→守る事項→例外→存続→違反に気づいたとき→協議の順に並べ、定義語は初めて使う場所で定義する。
- 日付と署名は署名者本人が記入し、ひな形の空欄や残った別人の名前を提出前に確認する。
結論:宛先→誓約者→趣旨→条項→存続・違反→日付・署名の順に組み、前文に事情を書き込まない
誓約書は、短い書面であっても、骨組みが整っているかどうかで読みやすさが大きく変わります。骨組みは、題名と宛先、誓約者、前文(趣旨)、条項、末尾の約束事(存続・違反に気づいたとき・協議)、日付、署名欄の順です。要点は三つです。
- 誰が、誰に対して約束するのかを特定する。宛先と誓約者は、正式な名称と資格で書く。
- 前文には、何の契約や関係に関して何を誓約するのか、という目的と対象だけを書く。反省や経緯といった事情は書き込まない。
- 条項で使う言葉は、初めて使う場所で意味を定める。同じ意味の言葉は一つに統一する。
次の図は、一般的な誓約書を上から順に分解したものです。左が書くこと、右が気をつけることです。
誓約書の構造図(上から書面の順)
注意宛先は正式な名称で書く。担当者個人宛てにすると、組織への約束なのか個人への約束なのかが曖昧になる
注意署名欄と同じ名前にそろえる。未成年のときは、法定代理人の同意の欄を設ける
注意反省・謝罪・経緯を書き込むと、事実を認めた書面と約束の書面が混ざる
注意一条に一つの事項。定義語は初めて使う条の中で定義する
注意期間は契約書と食い違わせない。賠償額や制裁は、別に決めた範囲と合わせる
注意日付の空欄、ひな形に残った別人の名前に注意する
この順序は、読み手が「誰が、誰に、何を、いつまで、違反に気づいたらどうするか」を上から順に追えるように並べたものです。題名は、誓約書と念書の違いのページのとおり、中身が決まってから付けます。
宛先と誓約者を特定する:名称・資格・未成年のとき
宛先と誓約者は、書面の中で最初に読まれる情報です。ここが曖昧だと、書面全体の効力の及ぶ範囲が曖昧になります。
宛先は、約束を受ける側の正式な名称で書きます。事業者が相手なら、通称ではなく、取引の相手方としての名称を使います。担当者の個人名だけを宛先にすると、担当者が替わったときに、約束が誰に向けられていたのかが争われます。
誓約者は、約束をする本人です。個人なら氏名と住所、屋号を持つ個人事業主なら屋号と氏名、法人なら法人名と署名者の肩書(代表者など)を書きます。法人が誓約者のときは、署名した人が法人を代表する資格を持つ人であることが、書面から分かるようにします。
また、協力者が複数名いるときに、一枚の書面に全員の署名を並べるやり方は、誰がどの範囲で約束したのかが分かりにくくなります。人ごとに別の書面を取るか、少なくとも署名欄を人ごとに分け、それぞれの日付を記載します。
誓約者が未成年のときは、特に注意が要ります。未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意が必要で、同意のない法律行為は取り消すことができます(民法5条1項・2項)。ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為は除かれます(同条1項ただし書)。誓約書は、誓約者が義務を負う書面なので、この除外には通常当たりません。そのため、本人の署名のほか、法定代理人の同意の欄を設け、氏名と本人との関係を書いてもらうことが、書面の外側の運用として必要になります。
書き方の例(一般的な例) 誓約者欄の書き方
個人事業主
理由取引の相手方として、屋号と本名の両方で特定できます。
法人が誓約者
理由会社を代表して署名した人であることが、書面から分かります。
誓約者が未成年
理由同意のない法律行為は取り消せる(民法5条2項)ため、同意の有無を書面で確認できるようにします。
確認の問い宛先と誓約者を書く前の問い
約束を受けるのは、組織か、個人か。
理由担当者が替わっても約束が続くように、事業者への約束なら事業者名を宛先にします。
署名する人は、誓約の内容を引き受ける資格があるか。
理由法人の代表者か、権限を委ねられた人か。個人なら成年か。資格が分かる欄を設けます。
一枚の書面に、複数の人の署名を並べていないか。
理由人ごとに日付や理解の度合いが違います。書面を分けるか、署名欄を分けます。
前文(趣旨)に書くことと、書かないこと
前文は、書面の入口として、何の関係に関して何を誓約するのかを述べる部分です。書くのは、契約や関係の特定(どの契約に基づく業務か)、誓約の対象(どの情報や物か)、誓約の範囲(いつまでか)に絞ります。
書かないほうがよいのは、反省、謝罪、畏怖、不安、経緯といった事情です。前文に「私は先般の不手際を深く反省し」「多大な不安を与えたことを認め」と書くと、その書面は、事実を認めた書面としても読まれます。約束の書面と、事実を認めた書面が一枚になるため、事実が違っていたときに、約束と事実の両方が争点になります。署名した人も、何を認めたのかを後から説明しにくくなります。
事情を残す必要があるときは、誓約書とは別の書面(経緯の確認書など)で扱います。書面を分けておけば、事実の確認と将来の約束とを切り分けて扱えます。
書き方の例(一般的な例) 前文を整える
事情の書込み
理由前文で認めた事実が、約束と一体で読まれるのを避けられます。
対象の広さ
理由対象が広すぎると、何を守ればよいかが分からず、守ったかどうかの判断もできません。
自由意思の書込み
理由文言を重ねても、実際の取り方が伴わなければ、証拠としての意味は小さくなります。署名の取り方は署名してもらう手順で整理しています。
条項の並べ方:定義→守る事項→例外→存続→違反に気づいたとき→協議
条項は、読み手が迷わないように、決まった順序で並べます。一般的な順序は、定義、守る事項、例外、存続(いつまで効力があるか)、違反に気づいたときの報告、協議です。定義を先に置くのは、守る事項の中で使う言葉の意味を、読む前に押さえてもらうためです。例外を守る事項の直後に置くのは、例外が離れたところにあると、読み落とされるからです。存続は、期間を契約書と合わせるために、末尾近くに置きます。
次の例は、秘密保持の誓約を題材にした、書面の例です。実際に使うときは、契約や関係に合わせて、守る事項と例外を組み替えます。
誓 約 書(例)
〇〇株式会社 御中
- (目的)本書は、〇〇契約(〇年〇月〇日付)に基づく業務を行うにあたり、誓約者が守る事項を、誓約者が個人として確認するものです。
- (定義)本書で「秘密情報」とは、前条の業務に関連して、〇〇から開示され、または知り得た情報のうち、〇〇が秘密として管理するものをいいます。ただし、開示を受けたときにすでに公知であった情報は含みません。
- (守る事項)誓約者は、秘密情報を、前条の業務の目的以外には使用せず、〇〇の承諾なく第三者に開示しません。
- (例外)法令の定め、または裁判所もしくは行政機関の命令により開示を求められたときは、前条の定めにかかわらず、必要な範囲で開示できます。この場合、誓約者は、法令上許される範囲で、事前に〇〇へ通知します。
- (存続)本書の定めは、〇〇契約の期間中、および〇〇契約に定める期間、効力を有します。
- (違反に気づいたとき)誓約者は、本書に違反した、または違反のおそれがあることに気づいたときは、速やかに〇〇へ報告します。
- (協議)本書の解釈に疑義が生じたときは、誠意をもって協議します。
〇年〇月〇日
住所
氏名(署名)
この例には、賠償の額や違約金の定めを置いていません。損害賠償や金額の決め方は、書面の目的を変えてしまうため、別のページで整理しています(念書に違約金・保証人・差押えの承諾を入れるとき)。
この例で、存続の条を「〇〇契約に定める期間」と契約書に合わせているのは、期間が二つの書面で食い違うのを避けるためです。別の書面で期間を別に定めると、どちらの期間によるかが争われます。管轄の定めを置く場合も、契約書に定めた裁判所と同じにそろえます。
条の見出しは、内容を一言で表すものにします。見出しがあれば、後から書面を探すときや、署名前に説明するときに、条を指し示しやすくなります。一つの条に複数の事項を詰め込むと、見出しも付けにくくなり、読み落としも増えます。
条文の文体を整える:主語・「等」・努力と義務・判断者
条項の中身が適切でも、文の書き方が曖昧だと、守る範囲が読み手ごとに違って見えます。誓約書で特に問題になりやすいのは、次の四つです。
- 主語が省かれている。「第三者に開示しない」と書くと、誰が開示しないのかが分かりません。「誓約者は」と主語を置きます。当事者の呼び方は、「甲」「乙」より、「誓約者」「〇〇(会社名)」のほうが、署名する人にも伝わりやすい書き方です。
- 「等」「その他」「一切」「いかなる」で範囲が広がる。列挙のあとの「等」は、何が含まれるのかが読み手に分かりません。守ってほしい範囲を広げたいときほど、何を指すのかを具体的に書き、残りは運用の指示に委ねます。
- 努力義務と義務が混在している。「漏えいしないよう努めます」と「漏えいしません」が条ごとに混ざると、どこまでが結果の約束なのかが分かりません。義務にする事項と、努力にとどめる事項を決めて、書き分けます。
- 判断する人が決まっていない。「必要に応じて」「合理的な範囲で」と書くだけでは、誰が必要かどうかを判断するのかが決まりません。報告するのはどんな場合か、誰に対してか、いつまでにか、という形で書きます。
書き方の例(一般的な例) 文の書き方を整える
主語
理由誰の義務かがはっきりし、署名する人が自分のこととして読めます。
「等」
理由「等」に含まれる範囲が、人によって違って読まれるのを避けられます。
判断者
理由報告の場面と相手方が特定され、守ったかどうかを判断できます。
文体は、書面の読みやすさだけでなく、署名する人が守れるかどうかにも関わります。守れない書き方の書面は、署名しても実際には守られず、守られなかったときに、どこまでを違反とするのかが争われます。書き終えた条文は、署名する人の立場で一つずつ読み、「自分は何をすればよいか」と「どこまでが違反か」が分かるかを確かめます。
定義語は、初めて使う場所で定義する
書面の中で特別な意味を持たせる言葉は、定義語として、初めて使う場所で意味を定めます。たとえば、第1条の中で「秘密情報」という言葉を使い始めるなら、その第1条の中で「…(以下「秘密情報」といいます。)」と定義します。定義が第8条にまとめて置かれていると、第1条を読んだ人は、その言葉を普通の意味で読んでしまい、あとから定義を見つけて読み直すことになります。
定義語のルールは、次の三つです。
- 初出の場所で定義する。前文で使うなら前文で、条項で使うならその条で。まとめて冒頭に置く方式を選ぶなら、前文に定義条があることを示す。
- 定義した言葉は、そのまま使う。定義語と、似た意味の言葉(「情報」「資料」「データ」など)を混ぜると、別のものを指すのかが分からなくなります。
- 定義を変えたら、その言葉が出てくる全部の条を読み直す。定義の範囲を広げたり縮めたりしたとき、各条の例外や存続の記述とずれが出ることがあります。
書き方の例(一般的な例) 定義語の置き方
定義の位置
理由読み手が、最初から定義された意味で読めます。
言い換え
理由言い換えが混ざると、条ごとに範囲が違うように読まれます。
定義の広さ
理由広すぎる定義は、署名した人が守りきれず、書面全体の信用を落とします。範囲の絞り方は重すぎる誓約書の見分け方と直し方で整理しています。
空欄式・選択式の書式に潜む落とし穴
インターネット上や冊子のひな形には、空欄や選択肢が多く含まれています。空欄は、署名の場で埋めるものと、作成者が先に埋めるものとが混ざりがちです。次のような場面で、問題が起きやすくなります。
空欄式・選択式の書式で起きがちなこと
日付の空欄
起きがちなこと空欄のまま署名され、後から別の日付が書き込まれる。署名した日と、書面に書かれた日が違う。
防ぎ方日付は署名と同時に、署名者に記入してもらう。後日の記入は避ける。
署名者名の埋め込み
起きがちなことひな形に印字された別の人の名前が残る。前に使った書面を流用して、宛先や契約名が違う。
防ぎ方提出前に、印字された宛先・契約名・誓約者名を一つずつ確認し、署名欄は署名者本人が自署する。
選択肢(チェック欄)
起きがちなことチェックが入らない項目が空のまま残り、どれを選んだのかが分からない。
防ぎ方未選択を許さない。必要なら「該当なし」の選択肢を設ける。
説明書きの残り
起きがちなこと「該当しない場合は削除」といった作成者向けの注記が、提出された書面に残っている。
防ぎ方書面を完成させたら、最初から最後まで通して読み、注記を取り除く。
署名欄の形も、決めておく必要があります。署名欄には、誓約した日、住所、氏名を並べ、署名は本人が自筆で書きます。氏名を印字して押印だけをもらう方式(記名押印)もありますが、署名のほうが、本人が書いたことを示しやすい形です。署名または押印があるときは、書面は真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。ただし、この推定は、反証があれば覆ります。署名の取り方の詳細は、誓約書に署名してもらう手順のページで整理しています。
さらに、書面の末尾かフッターに、版の番号と作成日を入れておくと、複数の版が出回ったときに、どの版に署名したのかを確認できます。一人に交付する控えにも、同じ版の番号が付くようにします。
起きがちなこと
書面の構成で起きがちなこと
- 前文に反省や経緯を書き込み、約束の書面と、事実を認めた書面が混ざる。
- 宛先が担当者個人の名前だけで、担当者が替わったときに、約束の相手方が分からなくなる。
- 法人の署名欄に、署名した人の肩書がなく、会社を代表した署名かどうかが分からない。
- 定義語が第8条にあり、第1条で使われた言葉の意味が、読み手に伝わらない。
- 「情報」「資料」「データ」が混在し、定義した言葉との関係が分からない。
- ひな形の日付や署名者名が空欄のまま、あるいは前の人の名前が残ったまま提出される。
- 契約書と誓約書で、存続の期間が別々に書かれ、どちらによるのかが決まっていない。
どれも、書き終えた書面を、署名する人の目で一度通して読めば見つかる問題です。作った人の頭の中の前提を外して、書面に書かれたことだけで意味が通るかを確かめます。
よくあるご質問
誓約書に、必ず書かなければならない事項はありますか?
法律上、誓約書に必ず書かなければならない事項が決められているわけではありません。契約の成立に、書面の作成などの方式は要らないからです(民法522条2項)。ただし、実務では、宛先、誓約者、誓約の対象と趣旨、守る事項、日付、署名が書かれていないと、誰が誰に何を約束したのかが読み取れません。この六つは、そろえておくのが一般的です。
前文に、これまでの経緯を書いてはいけませんか?
書いてはいけない、という決まりはありません。ただし、経緯や反省を前文に書くと、その書面は、事実を認めた書面としても読まれます。事実が違っていたときに、約束と事実の両方が争点になりやすくなります。経緯を残す必要があるときは、誓約書とは別に、経緯の確認書などの書面を作る方法があります。
誓約者が未成年のときは、どうすればよいですか?
未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人の同意が必要で、同意のない法律行為は取り消すことができます(民法5条1項・2項)。誓約書は誓約者が義務を負う書面ですから、本人の署名のほかに、法定代理人の同意の欄を設け、氏名と本人との関係を書いてもらう運用が一般的です。
ひな形の空欄は、誰がいつ埋めますか?
作成者が先に埋めるものと、署名者が署名の場で埋めるものを分けます。宛先、契約名、守る事項などは作成者が先に確定させ、日付、住所、氏名は署名者が署名のときに記入します。空欄のまま署名をもらい、後から埋める運用は、記入された内容を署名者が確認していないと争われる原因になります。
パソコンで作った書面でも、有効ですか?
書面の作成方法に決まりはなく、パソコンで作成した書面でも、契約は成立します(民法522条2項)。署名欄は、署名者本人が自筆で書くと、本人が書いたことを示しやすくなります。署名または押印があるときは、書面は真正に成立したものと推定されます(民事訴訟法228条4項)。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、書面の内容や署名に至る経緯によって異なることがあります。書面の作り方に絞った解説で、個別の紛争の見通しは扱いません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 個人情報保護委員会 / 消費者庁